(2012年) SEOの終わり
- (2012-01-22 11:18:06)
雨後のタケノコだった10年前のSEO業界
インターネットでビジネスを行うには、検索エンジンの上位表示がポイントとなる。何のキーワードで上位になるかという問題はECサイト運営者には大きなテーマだった。
SEOを専門とするコンサル会社が雨後のタケノコのように生まれ、SEO業界というちょっとしたマーケットセグメントができあがった。
その気になれば、パソコン一つでできるビジネスだけに参入障害は低く、現在では無数のSEO対策会社で溢れる感じだ。
意外と小さなSEO市場
さぞ大きな市場に成長したのではと検索してみるとアウンコンサルティング社の発表があった。それによれば日本のSEO市場は200億円程度とのこと。
ベンチャーキャピタルや潜在顧客へのプレゼン的な意味合いも含まれるだろうから、それなりに水増し寄りの統計になっていてもおかしくない。それでも予想外の低い数字だ。
やはり、Googleは周辺産業の育成より「中抜き」「全部取り」の方針が徹底している。
淘汰が始まったSEO業界
当社にも数年前までは、SEO対策会社さん、中小も「小」の部類のSEO会社さんからの営業電話が鳴り響き辟易していたが、いつの頃からか電話も下火となった。
もう一つの変化は、最近、かなり大きな大手SEO会社さんから電話がきたこと。当社のような中小企業に電話しなければならない状況か、と早合点するのは危険だが、ありうる話だ。
(1)市場が飽和しSEO業者の淘汰が始まっている
(2)SEO自体の価値が減少している
私の印象としては「SEO自体の価値が減少している」がSEO業界衰退の最も大きな要因で、その結果として弱小SEO業者の淘汰が進んでいるのではないかと感じている。
<< 機械型スコアリング・システムから人気投票に軸足を移すGoogle >>
Facebook、ネット担当者の意識改革を迫る事件
思えば、2010年の中頃だろうか、消費者のFacebookでの滞在時間がGoogleを抜いたという米国発ニュース記事が話題になった。一般的にはどうでもよいニュースだが、ネットビジネスをやっている人々には驚愕だった。
それまで「Googleがインターネットの唯一無二の覇者」と信じていた人々には「勝負はまだ終わっていなかったのか!」や「これからはソーシャルが集客のキーワード」と意識改革を迫るものとなった。
Facebookが、ジリジリと追い上げていることはその数年前から話題になっていた。
「機械型スコアリング・システム」対「人型人気投票システム」
2000年前後当時、検索エンジンの巨人たちだったYahooやInfoseek、Exciteなどを軽く抜き去ったGoogleの競争力が「ページランク」アルゴリズムなら、Facebookのそれは「エッジランク」だろうか。
ページランクは、それまでのキーワードオンリーの重要性よりも、バックリンクやリンク元の信頼性を評価する。すべてスコアリング・プログラムでランクが計算される。ランク(評価)が高い方が上位表示されるという仕組み。
一方、エッジランクとは、そのユーザから見た「親密度」「重み」「経過時間」の3要素をベースとしたランク付けのアルゴリズムで、人による人気投票型検索エンジンに見える。
いわば「機械によるランク・システム」 vs 「人による人気投票システム」。
Googleも人気投票型アルゴリズムに軸足を移すのか?
私は、GoogleがあえてFacebookの人型人気投票システムを採用してほしくないと思った。秀逸な情報は必ずしも人々の人気と正比例の関係でない。
しかし、Googleが仮にFacebookの人型人気投票システムを採用するとしても、この分野で、当時すでに世界中で5億人以上の会員を獲得済みのFacebookにマーケティング的に追いつけないと感じたものだった。
あれから2年。その間、大きな事件といえば、Yahooが2010年に自社検索エンジンを断念し、Googleのエンジンを採用したこと。これで日本では名実ともに検索エンジンの覇者はGoogleのみになった。
Yahooは、結果的に検索アルゴリズム競争で敗北したのではなく、SEO業者のカネで売買されるバックリンク排除のコスト負担に耐えられなくなったのだと思う。
<< 1人勝ちを目指すGoogle >>
機械型検索に本気のGoogle
Googleは昨年(2011年)の今頃「パンダアップデート」と呼ばれる大がかりなアルゴリズムの改良を世界中にロールアウトし、無価値なコンテンツファームやリンクファーム、カネで売買されるリンクの排除に並々ならぬ決意を見せた。
もはやSEO業者が販売するどこかのオードルドメインやダミードメインからのバックリンク、そして、アフィリエイトの人たちにおカネで張ってもらうバックリンクも意味薄く。
一人勝ち・全部取りを目指すGoogleが見えてきた
パンダアップデートで果敢に攻めるGoogleを見て、やっぱり、機械によるスコアリングシステムで勝負するんだと思ったのもつかの間、2011年6月には「Google+」(グーグル プラス)を発表し、ソーシャルネットワークに参入することを表明。
数々のソーシャルサービスを失敗した後のGoogle+、短期間に驚異的なユーザ数を獲得し、おおむね大成功のスタートとなった。
それは、「機械による人気投票システム」か「人による人気投票システム」ではなく、どちらもいただくGoogleの「全部取り」戦略の第一歩に見える。
Googleは、Google+リリース直前Twitter社との契約が切れた時点で、Twitterのリアルタイム検索も提供しなくなった。
Facebookの内容も検索結果から排除の方向に向かっているらしい。
Facebook自体、Googleのクローリングに自ら制限をかけていると思われるが、逆にGoogle自身が「Facebookお断り」という方向を打ち出してきた形だ。
<< サーチプラス、Google社の方針が明確に >>
サーチプラスの発表
さらについ最近、2012年1月11日、Googleによって「サーチプラス」が発表された。
「米Googleは現地時間2012年1月10日、同社のGoogle検索サービスを強化し、よりパーソナルな検索結果を得られる『Search plus Your World』を導入したと発表した」
記事によると、サーチプラスは下記3機能で構成されるという。
・Personal Results
・Profiles in Search
・People and Pages
Twitter・Facebookの排除が始まった!
そのわずか数時間後には、Twitter社は非難声明を出している。あまりの早さに声明は準備されていたとしか思えない。
インターネットではTwitter社の声明を支持する意見も多数あるようだが、しかし、Twitter社は非難声明は犬の遠吠えのように実質的な対抗力ではない。
<< パーソナル検索時代の幕開け >>
パーソナライズド検索へ向かうGoogle
Googleサーチプラスは、記事を読む限り、パーソナライズドされた検索結果(パーソナル・リザルト)が、キモとなる。これはgmailなど使用するためにGoogleにログインした状態で検索した場合に適用される。
ということは、ログインしなければ現状の検索結果が表示されるものの、ログインしていなければ、より自分に関係あるコンテンツを中心とした検索結果となるということ。
では、ユーザはどれくらいの比率でログインした状態でGoogle検索を利用するのかが焦点になるだろう。
当社の顧客のgmail比率は3%にも満たない。Yahooメール比率が25%であることを考えると、現状はいかにも弱いシェアだ。gmail以外にもログインするモチベーションはあるが、現状大きくはないように思う。
5年・10年後はわからない。
ログインしていない人にもパーソナライズド検索へ
よって、サーチプラスのインパクトは現状、まだ限定的ではないかと感じるが、一方で、Googleは着々と個人特定の手法を準備しているようだ。
たとえば通常検索の「検索候補」の表示では、現状でもログインしない状態でパーソナルな候補をレコメンドしてくる。こんなところを見ると、Googleは全体としてパーソナライズド検索に向かっている匂いは避けがたい。
<< 意識改革をする人としない人 >>
ネット業界のパラダイムシフトの年
パーソナライズド検索では、上位に表示されるためには、SEOで上位ランクを獲得することよりも、いかにその検索者本人とパーソナルな関係を築いているかが勝負だろう。
具体的には「プラス1」ボタンを事前に押しておいてもらうことが、まずは重要になってくる。
Googleは、Twitter・Facebookの排除やその時期の表明もしていなければ、パーソナライズド検索への移行時期も表明していない。
だから、いつからそうなるのかわからないが、英語圏から始まり、徐々にパーソナライズドな方向へ量・精度ともに強化されていくだろう。
多かれ少なかれ、今後ネットビジネスを行う企業はソーシャルであることが求められている。2012年は、過去10年間のSEOという発想自体が、大きく変化する年になりそうだ。
一方で、10年前のSEO対策を行う人々
以前は外部リンクが重要だった。「相互リンク互助会」のようなサイトも百花繚乱したが、すぐに廃れた。
今でも知らない会社さんから相互リンクの申し出メールがあったりして唖然とする(信じられないが事実だ。先月も2通もらった)。10年前のSEO手法がまだ流通していることも事実だ。
<< 過去10年間のSEOが終焉 >>
その場限り・小手先SEO対策の終焉
「相互リンク」が検索エンジンに見破られるようになると、今後はカネで販売されるリンクが流通した。
しかもリンク元サイトの運用年数やIPアドレスのクラス制限なども加味したリンクがSEO業界では商品化された。オールドドメインが商品化された時期だ。しかし、これも数年だった。
当社は相互リンク対策やSEO業者の販売リンクを購入したことはないが、自社でテーマごとにドメイン名を複数制作しIPを分散するなどの対策を行ったことがある。
これは単一ドメイン内で、すべての広範囲な情報を掲載したサイトより、比較的小さなテーマで専門的に扱うサイトにすることが目的だった。
当然、一番のモチベーションはやはりSEO対策としての効果。
しかし、テーマを分けて、それぞれのテーマで充実したコンテンツを制作し運営していくことは予想外の負担であり、分散されたサイトは結果的に無用な投資(主に時間と労力)で終わった。
無駄に消耗しただけのSEO対策
「バックリンクだ、IP分散だ」という過去10年間のかけ声は、何だっただろう。
そういうその場限りSEOや小手先SEOが、いよいよ終焉を迎えつつある現在、無駄にあがいた過去数年間が、不確実でその場限りの対策に振り回されただけの作業だったと反省している。
<< 視聴率=テレビと同じになったインターネット >>
テレビ界と似た構造になってきたインターネット
ソーシャル時代に重要なことは、どれだけ多くの人々に影響を与え、彼らは動員できるか。
GoogleにしてもFacebookにしてもユーザのネット滞在時間を引き延ばしてくれるコンテンツは、それが秀逸なものかどうかに無関係に「善」なのだろう。
ユーザのネット滞在時間が長ければ長いほど、彼らには利益をあげるチャンスが増加する。
それは現在のテレビと全く同じ構図で、視聴率が取れる番組が、すなわち、よい番組でありテレビ局の利益率に大きく寄与することと同じである。
インフルエンス・ランクとカリスマ的人材の有無
結果として視聴率が取れるコンテンツは、圧倒的に芸能人や有名人に依存し、誰が出演するかによって番組の価値が変動するように、インターネットも同じようにコンテンツそのものよりネットユーザーを動員できるカリスマ的人材の存在がポイントとなっていくだろう。
ユーザを動員できる指標を一部の人々は「Infuluence Rank」(インフルエンス・ランク)と呼んでいるようだ。
有名な「Page Rank」同様、ユーザへの影響力を計量するためのアルゴリズムをGoogleは開発し、その特許を取得中とのこと。
カリスマ・インフルエンサーの育成
人々を惹きつけ動員し、かつネットでの活動(ブログやSNSでの発言、自ら進んでの口コミ)を誘発できるインフルエンサーは今後ネット企業から需要が高い人材となる。
ネット企業は、そういう人材の育成を自社で試みるだろうが、テレビ界同様、芸人やスターを専門に育成する芸能プロダクションのようなビジネスが新しい業態として生まれてくるだろう。
ネットのインフルエンサーはテレビの芸人やスターほどの爆発的影響力はないにしても、違う種類の影響力(人々をSNSでの活動に向かわせる影響力)を持つことになる。
コンシューマー向け商材を扱う大企業さんのビジネススタイルは、こうなる:
テレビで広範囲に周知し、興味を抱いて検索してくる消費者を各インフルエンサーが消費行動へと誘導する。
戦争で言えば、テレビが空爆で、各インフルエンサーがネットでの地上戦を指揮する各部隊の隊長といったところか。
ネットに入り込んでくる消費者をできるだけ多く絡め取ることが隊長の仕事だ。
<< 巨人たちのパワーゲームに振り回されないために >>
我が道を行くAmazon
巨人たちの激闘には関わらず、ひたすら我が道を行くAmazonが気になる。
最終勝者はAmazonかもしれないと思うこともある。
今度はソーシャル?振り回されないために
これからはソーシャルがポイント! 多くの企業は、すでにソーシャルに焦点を絞ったネット対策に取り組みはじめている。
しかし、SEO対策で無駄に振り回されてきた企業も多い。中には興醒めた企業もあることだろう。
自分自身の感想も、思えば、過去10年、巨人たちのパワーゲームに振り回されただけのSEOだった気がしないでもない。
弱者が常に強者に振り回されるのは、歴史が示すところ。
GoogleやFacebookに振り回され、そして今後も出てくるであろう米国系メジャープレイヤーに好きなように振り回される予感もある。
そうなれば、無駄に時間・体力を消耗する。自ら進んで損失を生成しているようなもの。
ソーシャルに突進する企業もあれば、一歩立ち止まり静観する企業もあるだろう。インターネットでは、早くもSEOならぬ、SMO(Social Media Optimaization)なる言葉が使われ始めているが、個人的には食傷気味だ。
どちらがよいのかわからない。
言えることは、ネット界の動向に充分に注意を払いつつ、一方で盲目的に追従することはせずに一定の距離を維持、もしくは完全に距離を保ったまま、Amazonのようにひたすら自社戦略を追い求める方がよいのではないかと考えている。
<< Adwordsでブランド広告は厳しい< | >ブランド離陸、主婦の活用がカギ? >>