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ハードディスクの故障で学ぶ教訓
  • (2009-07-11 09:33:09)


HDDが壊れそうなら、なんとしても最初にデータ救済を優先すべき



自宅PCのハードディスクがエラーとなる。ハード的なエラーの可能性があるが原因不明。セーフモードでも立ち上がらず、しぶしぶXPを再インストール。しかし、Cドライブ(基本パーティション)へのOSインストールに失敗。基本パーティションのエリアでのハードエラーを疑い、Dドライブ(論理パーティション)へのインストールを行う。

一応インストールできたものの文字化けなどの発生や将来のトラブル時のデータ保全のためパーティション分け作業を行う。この時点で私のやるべきことはハードエラーが疑わしいのだから、「一刻も早いデータの救済と保全」であるが、夕食時にお酒を飲んだ後で、夜遅く眠気もあって判断力や集中力は緩慢だった。

何のリスクも感じることなく、PartitionMagicを走らせる。リブートでハングアップしすべてが台無しとなる。起動ディスクは作成していない。中途半端なフォーマットをかけられたハードディスクはOSから認識さえされない状態となる。ここに至り事の重大さを認識。眠気も吹き飛ぶ。

模索するも破壊されたパーティションを復旧させることはできない。フォーマットをやり直し新しくパーティションを切るしか選択肢はない。しかし、それでハードディスクが認識できてもデータは戻ってこない。人生と同じ不可逆変化である。

天災の後、人災で不幸を拡大しないこと



自然災害が発生し、対処の過程で人間のミスが加わり事態がさらに悪化する。愚か者のお手本のようなパターンを演じてしまった。とりあえず人災による被害をこれ以上拡大させないために触らないことにした。そして、対策案を練る。

今回のフォーマットではデータが保管されている位置情報だけが削除され、データ自体は残されていると推測されるので10万円くらいかけて専門の復旧業者に出すか、復旧用のソフトウェアによって救済を試みるしかない。

ネットを調べると「ファイナルデータ」なるソフトウェアがよく上がってくる。OSが起動しないことにはファイナルデータのインストールと起動さえできないが、ファイナルデータの最新バージョンではCDブートができるようになっていた。救われた。

深夜、サイトからクレジットで購入し製品版をダウンロードする。そして、ダウンロードしたisoデータをCDに焼く。isoファイルは「イメージファイル」と呼ばれている。私にはその意味は不明だが、XPから一個の塊ファイルのように見えるものらしい。CDやDVD内ではこの形態にて保存されているとのこと。このままの状態でCDに焼けば、起動ディスクが出来上がるらしい。

焼き方がわからない。目標までハードルがいくつかある。深夜ごそごそと苦悩する。焼き方を調べると「DVD Decrypter」というソフトウェアが「DVD」という名称ながら、CDへのisoファイルの焼き込みもできるらしい。運よくファイナルデータのisoイメージを焼き込みができた。

起動する。

どんなOSもどきが立ち上がるのかと起動中のメッセージを眺めると、なんとLinuxのようだ。Knoppix(ノピックス)というDebianディストリビューションの一派生バージョンだった。

データ救済ソフトで繋ぎ止める



CDブート用「ファイナルデータ」はLinux用アプリケーションとして開発されたデータ復旧ソフトウェアということになる。ハードディスク内に残されたデータの位置情報を数時間かけて収集しリスト化する。復元したいデータはネットワークの共有フォルダーに戻すことができる。驚くべき事はネットワーク内にある別のPCの共有フォルダーを認識できる点。

私のPCはXPをインストールしても、そのままではネットワークカードがOSから認識されず、メーカー提供のドライバーを入れる必要があったが、Knoppixは楽々とネットワークカードを認識し、TCP/IPを起動させ、Windowsの共有フォルダーを認識できる。

ネットワークを介したファイルの共有はWindowsではSMBというプロトコルが使用されているので、KnoppixにはおそらくSMBをサポートするSambaというファイル共有プログラムが実装されているのだろう。SMBは下層レイヤーにはNetBIOS over TCP/IPが使用されている。

ところでネットワークフォルダーを共有するさい、IPアドレス+フォルダー名が求められる。さらに、ユーザーIDとパスワードも必要なる。見よう見まねでフォルダーアドレスとして「192.168.1.100/data」、ID/パスワードとして「Administrator」とWindowsのAdminパスワードを入れると、「/mntの下にマウントされました」とメッセージが返る。

「/mnt」がどこにあるのか不安だったが問題なかった。Linuxの通常のディレクトリー構成となっていた。ネットワークフォルダーを仮想的に自己ドライブのディレクトリーとして認識される。

「ファイナルデータ」のデータ救済はハードディスクごとや論理パーティションごとの単位で可能。救済方法にはいくつかのオプションが用意されている。後日Widnows版の「ファイナルデータ」を試したが、救済オプションはWidnows版の方がはるかい多い。

しかし、今回のように間違ってファーマットした場合は「クラスタースキャン」が基本のようだ。ディスク表面をすべてなめてデータを調べる方式。CDブートKnoppix版では2時間程度で、Windows版では一晩かけてHDD内をすべてスキャンかけて救済可能なファイルをリストアップしてくれる(Knoppix版が断然速かった)。

運が良ければフォルダー構造ごと救済可能なファイルのリストアップがされるが、フォルダー構造情報が失われたもの(フォーマットなどを繰り返して人災を重ねた場合など)でも、単体のファイル名がソートされてリストアップされる。よくできたソフトウェアと感心した。

逆にデータ復旧サービスベンダーはこのソフトウェアでできるレベルなのか、それとももっと奥深い技が駆使されているのかと脳裏をよぎる。理論的にはディスク表面の磁気データが読み出せればだいたいのものは復旧できるのだろうが、逆にいろいろ手が加えられた後はどうしようもない。

教訓



今回はたまたま「ファイナルデータ」のおかげで最低限のファイルを救済することができた。ただただ運が良かった。今回のトラブルはいろいろ反省させられた。

ハードは際限なく安くなりコモディディティ化の一途だから購入負担も激減しているが、そのことが逆にデータの重要性を忘れさせる。「油断」という言葉がぴったり。ハードは買い直せばよいが、データは戻ってこない。もし絶対必要なデータなら、データ復旧専門業者に依頼しなければならない。10万でも100万でも、戻ってくれば運がよいほうかもしれない。

それだけ貴重なデータなら場合によって機密性もあるかもしれないので、データ復旧専門業者に開示するというリスクも発生する。

・「データは財産」という心構え

データは財産。バックアップをとる。リアルタイムによる完全なバックアップは労力など費用対効果が悪いので、失われても最悪やむを得ない損害の範囲、たとえば半年、1ヶ月、1週間、1日など設定し定期バックアップのルーティンワークを決めておく。

・トラブルの予兆

今回のトラブルには予兆があった。メールの取り込みが非常に遅かったので「何か変だ」と感じていた。事務所から操作するメールサーバも同じサーバだが、それには問題がないのでネットワーク回線の問題と考えていたが、調査することもなく放置していた。今から思えば時間とともに遅さは次第に悪化していった。

ADSLから光回線にアップグレードした時は大きなヒントだった。回線の理論的なスピード差は数百倍、Webの表示などは格段に速くなったにもかかわらずメールは依然遅かった。このヒントを見逃した。

さらに時々カタカタとPCから音がでていることを感じた。「何か音がしたようだ」とか「何が鳴っているのか?」で終わる。ハードディスクが壊れる際「音がする」現象は昔から聞いていたが、初めての体験だった。

なぜ音がでるのか、ヘッドがディスクに接触しているのか?(まさか!)、あるいは読めないセクターに対して、激しいリトライを繰り返すヘッドの動作音なのか?それは今も不明だが、物理的に音がしていたことは事実。

こうやってみればいくつもの大きな予兆を見逃していたことになる。

・トラブル発生に至っても重大性の認識欠如

夕食でお酒を飲んだ後に緩慢な動作でトラブルに対処。判断力のない危険な操作を繰り返す。本番に至ってもステージに上がっても自分は状況を認識できなかった。

最終的にはデータ救済ソフトという駆け込み寺のおかげで、最悪の事態は回避できたが、喜んでいる場合ではない。むしろここで多少痛い目に遭って、データに対する態度を体全体で悔い改める必要があったかもしれない。今回は運が良かった。甘えないようにしないと次回は運が悪いかもしれない。

・事故は必ず発生する

それは避けがたい。しかし、わずかな事前作業で被害を最小限にコントロールできる方策もある。しない手はない。

ハードディスクのデータ程度で大げさに考えるほどのことでもないが、こうやって文章にして反省してみると、一連の状況は原発の事故のような重大な事故の状況とも図式はそっくり。小さなトラブルも大きなトラブルもミスしやすいポイントは同じ。








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