McDonald's32, part of the old regime
★マクドナルドを世界最大のレストランに発展させたレイ・クロック(Ray Kroc)の著書『GRINDING IT OUT』(紡ぎ出す)から抜粋。現代資本主義型ブランドのケーススタディ。(20203040) 今日は、ジューン・マルティーノの辞職。(2013/07/25)


マザー・マルティーノ、陰の副社長


ジューン・マルティーノは、マクドナルド創業時のメンバーの一人で、社内ではハリー・ソンボーンに次いでNo.3のポジションにあった。入社はハリーより早く、仕事内容ははじめはブックキーピング(経理)、その後は総務全般を仕切る存在となる。

霊的は、やや不思議な能力の持ち主。人の能力やポテンシャルを見抜く力と人間関係を円滑にする能力があり、社内では「中庸の副社長」(vice president of equilibrium)や「マザーマルティーノ」(Mother Martino)と呼ばれた。


創業時のマクドナルドに貢献


みすぼらしい格好でレイの事務所に迷い込んだときの描写は心打たれる。レイ自身感じるものがありすぐに採用。長い年月レイがもっとも大きく信頼し心を許した部下だったと思われる。ジューンはマクドナルドの株式のうち10%を付与されている。ちなみにハリーは20%。

ジューンは現在の日本人の感覚、ましてアメリカ人の感覚からすれば異常と思えるくらいプライベートの時間を犠牲にしてマクドナルドに貢献した。親分肌のレイの暴走やレイとハリーの対立の緩衝的な役割はレイも何度か書いている。


レイの決断


There was one other thing I had to do to set the situation in the Chicago office straight, and that was to ask June Martino to retire. It was a tough thing for me. June was a wonderful person, and she had been a tremendous asset to the organization. But she was part of the old regime, and her approach would no longer work.

シカゴオフィスでやらなければならないことがもう一つあった。ジューン・マルティーノに辞職を依頼すること。辞職を依頼する理由として次の2点が上げられている:

(1)彼女は古い時代の体制に属していること(part of old regime)
(2)もはや彼女の手法は通用しなくなった(no longer work)

日本人から見れば非常に厳しい措置に見える。おそらくアメリカ人にとっても同じく厳しく見えるのではなかろうか。


「走狗煮らる」


これだけの功労者であるジューンは、株式公開からわずか3年後、1968年辞職。その理由はレイが自主退職を勧めたものと思われる。少なくともレイからなんらかの圧力があったことは、レイ自身書いている。このとき読者の脳裏に浮かぶ言葉はここでも「走狗煮らる」かもしれない。

非常に考えさせられるパート。ハリーとジューンがいなくなることで創業メンバーは去り、権力構造はレイと子飼いのメンバーだけとなる。


レイは企業が変化すべき方向を見据えていた


秀頼の天下が成ると、秀吉にかわいがられる部下達は、戦争一筋の武闘派から、事務能力にたけた官僚派の連中へと変化していくが、企業も成長とともに求められる人材は変化していく。ハリーなき後、ジューンの存在意義は薄れたのかもしれない。

レイは、企業が変化することを楽しんでいたし、柔軟な発想で、企業をドンドン変化させてきた。フランチャイジーや社内からは、変化に対して悪評も立ったし、オペレーター組合のような反マクドナルド勢力の結成もあったが、独立体制を固めマクドナルドの野望を次から次へと実現していく。レイの行動に揺らぎは感じられない。


「名誉ディレクター」


ジューンは退職を迫られたが、しかし、ハリーのように裸一つ出されるのではなく終身「名誉ディレクター」(honorary director)のポジションが与えられた。戦国時代で言えば、家康がねねを安堵した構図に非常に似ていると感じられる。

思えば、「名誉○○」というポジションは実によくできた制度だ。ベンチャー企業が成長の課程で、どのように役割を終えた人々の新陳代謝を促進するかは、創業者にとっては厳しいが選択ではあるが、せめて礼をもって遇する、もしくは対外的に遇しているとアナウンスするための制度として「名誉○○」は生まれたのかもしれない。


ブランドは功労者の死骸の上に成立する構造物


役割を発揮する人もいれば、役割を終える人もいる。役割を終えた人間の多くは、廃棄される運命になりがちなことは歴史が語るところ。政治の世界や企業の世界とまったく同じか。

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  • (2013-07-25 06:09:55)
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