- (2011-07-02 06:50:45)
Googleの「炎上マーケティング」対策
昨年末のニュースだが、Google社は評価が悪い・悪評が立っている企業や個人のランクを落とすアルゴリズムを導入すると発表した。計算精度やアルゴリズムの完成度は不明ながら、これにより劣悪な企業はGoogleの検索結果の上位表示が困難な傾向になると思われる。
(とはいえ、どうやって企業の優劣や劣悪具合を判断するか、困難が予想される)
この発表はGoogle社の「炎上マーケティング」対策であり「炎上マーケティング」に対するスタンスの表明である。アナウンス効果を狙ったポーズの意味合いが大きいかもしれない。
炎上マーケティングとは?
「悪事千里を走る」のコトワザどおり、炎上は爆発的な広告効果が期待される。リンクも無数、リツイートも無限、瞬時に世界のソーシャルネットワーク内で製品名や会社名の爆発的自己増殖が繰り返えされる。悪評であっても知名度の無限スパイラル。「とりあえず知名度を浸透させたい企業」なら奥の手として使われることがある。
しかし誰もが扱えるマーケティング手法ではない
炎上マーケティングは爆発的ではあるが、しかし並の人間が平時の状況ではとても取り扱えるような代物ではない。思い出すのは信長の破れかぶれのゲリラ戦「桶狭間の戦い」。当時東海地方の覇者である今川義元によって絶体絶命のピンチに陥った信長が挑んだ戦いは結果として勝利したものの、信長は内心90%以上の確率で破滅を覚悟していたと思われる。
出陣の時「人間50年」と舞った話は作り話かもしれないが日本人の心に深く刻み込まれた。
信長のその後の戦い方は圧倒的軍勢でもって少数の敵をすりつぶす全戦必勝型戦法に終始し無理のある作戦はあえて避けていることからも、桶狭間がいかにやむにやまれぬ戦い方であったかが伺える。
炎上マーケティングは爆発的なマーケティング手法ながら、普通は自滅マーケティングで終わるだろう。
炎上マーケティングの凄い成功事例、ルーマニア「ROM」
今年、ルーマニアのチョコバー「ROM」が、この危険な「炎上マーケティング」で話題をさらっている。2011年Cannes Lionsでプロモ&アクティベーション部門とダイレクト部門でグランプリまで獲得。世界中に「炎上マーケティング」効果を知らしめる結果となった。ルーマニア国旗をパッケージに印刷したチョコバー「ROM」は国民的お菓子だったが、若者には古くてダサいルーマニア製というイメージがあった。そこで、ルーマニア国旗をアメリカ国旗に変更するという荒技を敢行。ルーマニア国民の愛国心に火を付ける。
ルーマニア国旗に戻せ!など国民からの怒りは尋常ではなく、さんざん炎上させた上で、「ジョークでした!」とパッケージデザインをルーマニア国旗戻し「ルーマニアバンザイ!」とランディングさせるもの。
Google炎上マーケティング対策の信頼性はどうだろう?
ソーシャルネットワーク重視に軸足を移すGoogleを個人的には疑問いっぱい。記事の内容や質や信頼性をコンピュータでは計算できない現状、消費者の体験談やレビューなどのユーザーエクスペリエンスに依存するしかないのも事実。
しかしいまさらFacebookを追わなくとも、コンテンツの善し悪しの判断をあくまでも科学的計算技術(セマンティック技術)で乗り切る姿勢を示すことがGoogleのGoogleらしさに自分には感じられる。
Googleではソーシャルネットワーク重視に軸足を移す作業が進行中である。「ユーザエクスペリエンスが劣悪な企業は(上位に)表示されにくくする」という発表もその一つ。
しかしどうやって「劣悪な企業」の劣悪部分を判断し「評判の悪い企業」を選別するのか仕組み(アルゴリズム)は見えない。
普通に考えれば一般ユーザーのユーザーレビューのネガティブ・ポジティブ度を文脈やキーワードからスコアリングするのだろうが、ユーザーレビュー自体がサクラやアフィリエイターが暗躍する時代。
今時のユーザーエクスペリエンスのかなりの部分はカネで買われたエクスペリエンスか、マスコミのパワーマーケティングで意図的・政治的に誘導されたエクスペリエンスが多いだろう。
また、上記のルーマニア「ROM」のケースはどうだろうか?炎上マーケティングの超成功事例として世界中で話題沸騰しているが、意図的に宣伝に動員されたルーマニア国民の心境はどうなんだろう?
Googleの「炎上マーケティング対策エンジン」「炎上マーケティング対策アルゴリズム」はルーマニア「ROM」をネガティブ or ポジティブどちらに解釈してスコアリングするのか、まったく推測がつかない。